いろいろな動物の実験は人間にも共通するものです。
例えば、勉強を教える時に怒って教えていたら勉強が嫌いになったり、梅干しを想像するだけでよだれが出たりするのも実験で裏付けられた学習理論から説明できます。
これらの実験は部下育成や自分の行動を客観的に捉えるために必要な知識になります。
なかには過激な実験がありますが、現代では倫理的配慮を厳守したうえで実験が行われています。
これから紹介する実験は非道徳的という結論に至らせるものではなく、学問の発展に寄与した実験としてご理解いただけたらと思います。
よく言えば、登場人物たちは”心理学界の桃太郎御一行”なのです。
1.人間
「ワトソン」は1歳に満たない赤ちゃんのアルバート坊やに、白ネズミを見せたと同時に大きな金属音を出すことを繰り返すと、赤ちゃんは白ネズミを見ただけで泣き出すようになる。
白ネズミ(条件刺激)が大きな音(無条件刺激)をイメージさせ恐怖を条件付けさせました。
このように学習により条件反射(条件反応)が作られることを実証しました。
嫌悪感や恐怖心が根付いてしまう例です。
主体的で積極的に行ってほしいことなどには、ポジティブな条件付けをしましょう。
イェール大学の「スタンレー・ミルグラム」の実験(アイヒマン実験)では「擬似電気ショック発生器」を使って隣室にいる生徒役の回答が間違うたびに強い電気ショックを与えることを要求しました。
これは、権威者による命令が個人を従属させ,殺人のような重大な結果をもたらす可能性があることを示しました。
実際は生徒役には電気を与えず苦しんでいるふりをしているだけです。
実験者は参加者に悲鳴が聞こえても「大丈夫です」と言い、最終的に65%の参加者が命の危険がある450Vのショックを与えました。結果、61~66%の範囲の人たちが致死の電気ショックを与えたというのです。
現実で言うなら権威者が上司で実験者は部下でしょうか。
権威に縛られた人は非道な事までも行ってしまう可能性があるというものです。
環境や状況によって異なる性格が形成された実験で性格というのは外的要因で変わるものでもあるとした。
先ほどの服従実験とあわせて状況と権威について警鐘を鳴らした実験となった。
2.猫
「ソーンダイク」は空腹の猫を柵付きのかごに入れました。ひもを引っ張ると柵が開く仕組みです。偶然、ひもを引っ張れると徐々に脱出時間が短くなりました。
これを試行錯誤説といい、行動の後に望ましい結果があると、行動を強めることができるとしたものです。
3.犬
「イワン・パブロフ」のパブロフの犬(実験)では後から訓練などで身に付く反射「条件反射」があるということを発見した。
これに対し、この絵で言うよだれは生まれつき持っている反射で「無条件反射」と呼ぶ。
トラウマや登校拒否、引きこもりなどもこの学習で作られるものがあります。
一度条件づけられたら、自動的に発動し習慣を形成することで人生を左右します。
アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが提唱した「学習性無力感」の実験。
回避できない厳しい状況に長期間置かれていると立ち向かう行動をとれなくなるといったものです。
客観的におかしいと気付いていても、「どうせ無駄だ」と思っているならそれは無力感を学習しています。
4.ネズミ
「スキナー」のネズミの実験。これは猫の実験と同じで、環境により強化された行動は発生頻度が増え、関係ない行動は弱まる、周囲の環境に動作は左右されるといった実験内容。
この実験では自発的な行動であることが重要な点である。
「トールマン」はネズミを迷路に入れエサが無くてもゴールへ走らせる。
ネズミはエサが置かれると頭の中で作った地図を思い出して一目散にゴールへ走った。
潜在的に道を覚えており(潜在学習)、報酬が置かれると持っている行動を発揮できた実験です。
このことは、学習が刺激と反応だけではなく、目的と手段でも結びつくものとしました。
5.チンパンジー
「ケーラー」はチンパンジーが柵の外にある棒を使ってバナナをどうとるかを観察し、試すよりも考えてから行ったことで、その場の状況を見ている事が分かった。
このような問題解決行動は、思考の転換により可能になることを状況から獲得するとした。
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