なぜ、浦島太郎は玉手箱を開けたのか?

心理記事
acworksさん

こんにちは、心理カウンセラーの西本(@masacounselor)です。

 有名な昔話に「浦島太郎」というお話があります。

この結末は、『浦島太郎が竜宮城で乙姫様から「絶対に開けてはなりません」と言われた玉手箱を開けて、おじいさんになる。』という内容なんですが、なぜ浦島太郎は玉手箱を空けてしまったのでしょうか?


心理学的には乙姫様の言葉に「心理的リアクタンス」が生じたと考えられます。


心理的リアクタンスとは、「制限されたことに対して反発して逆らう行動をとりたくなる」心理的な作用を言います。

禁止されればされるほど、興味を惹かれることを「カリギュラ効果」とも言います。


これは、社会心理的バイアスで日常でもよく生じる現象です。

「絶対に押すなよ」と言われると押したくなったり、「やりなさい」と言われるとやりたくなくなったりするものです。


このバイアスは他にも色々な場面でも見られます。

例えば、希少性の高い商品やコレクションであるほど欲しくなったり、恋愛が成就するまでに障害があった方が気持ちが燃えたりするのも、心理的リアクタンスが影響しています。


浦島太郎の物語の結末から”目先の快楽に溺れない”、”約束を守る事の大切さ”を教訓として伝えられてきました。

しかし、本当に「浦島太郎は意志が弱く、我慢が出来なかった」というオチで終わる物語なんでしょうか?

実は、この昔話には多くの人が覚えている最後とはニュアンスが異なる背景が隠れていました。

物語のおさらい

浦島太郎

むかしむかし、ある村に、心のやさしい浦島太郎(うらしまたろう)という若者がいました。

(中略)

 すると乙姫さまは、さびしそうに言いました。

「・・・そうですか。それはなごりおしいです。では、おみやげに玉手箱(たまてばこ)を差し上げましょう」
「玉手箱?」
「はい。この中には、浦島さんが竜宮で過ごされた『時』が入っております。
 これを開けずに持っている限り、浦島さんは年を取りません。
 ずーっと、今の若い姿のままでいられます。
 ですが一度開けてしまうと、今までの『時』が戻ってしまいますので、決して開けてはなりませんよ」
「はい、わかりました。ありがとうございます」

 乙姫さまと別れた浦島さんは、またカメに送られて地上へ帰りました。
 地上にもどった浦島さんは、まわりを見回してびっくり。

「おや? わずか三年で、ずいぶんと様子が変わったな」

 確かにここは浦島さんが釣りをしていた場所ですが、何だか様子が違います。
 浦島さんの家はどこにも見あたりませんし、出会う人も知らない人ばかりです。

「わたしの家は、どうなったのだろう? みんなはどこかへ、引っ越したのだろうか? ・・・あの、すみません。浦島の家を知りませんか?」

 浦島さんが一人の老人に尋ねてみると、老人は少し首をかしげて言いました。

「浦島? ・・・ああ、確か浦島という人なら七百年ほど前に海へ出たきりで、帰らないそうですよ」
「えっ!?」

 老人の話しを聞いて、浦島さんはびっくり。
 竜宮の三年は、この世の七百年にあたるのでしょうか?

「家族も友だちも、みんな死んでしまったのか・・・」

 がっくりと肩を落とした浦島さんは、ふと、持っていた玉手箱を見つめました。

「そう言えば、乙姫さまは言っていたな。
この玉手箱を開けると、『時』が戻ってしまうと。
・・・もしかしてこれを開けると、自分が暮らしていた時に戻るのでは」

 そう思った浦島さんは、開けてはいけないと言われていた玉手箱を開けてしまいました。
 モクモクモク・・・。
 すると中から、まっ白のけむりが出てきました。

「おおっ、これは」

 けむりの中に、竜宮や美しい乙姫さまの姿がうつりました。
 そして楽しかった竜宮での三年が、次から次へとうつし出されます。

「ああ、わたしは、竜宮へ戻ってきたんだ」

 浦島さんは、喜びました。
 でも玉手箱から出てきたけむりは次第に薄れていき、その場に残ったのは髪の毛もひげもまっ白の、ヨポヨポのおじいさんになった浦島さんだったのです。

おしまい

浦島が絶望するには十分すぎる要素があった!?
acworksさん

ここまで読んで、ただ単に浦島太郎に自制心が無かっただけではない事が、何となく伝わってきますでしょうか?

  • 見たことのない場所
  • 家も無い
  • 家族も友人も死んで誰ひとり知り合いもいない
  • 自分を知る人もおらず、死んだ存在となっている


幸せな時間から一転、完全に孤独となった浦島が絶望するには十分すぎる要素が揃っています。

さらに、そこで乙姫様の言葉を思い出して、玉手箱を開けるメリットを考えます。

  • 絶望したすべて取り消す事が出来る可能性
  • 幸せだった時間、竜宮城に戻れるかもしれない
  • 自分を求めてくれた乙姫様がいる


自分自身で考えたら、この状況で開けずにいられるでしょうか?


浦島太郎は心理的リアクタンスが生じながらも、約束を守る教訓を教えてくれますが、背景には不安や喪失感、孤独があったのです。


はるか昔、自給自足や人とのつながりが主な暮らしにおいて、その心理的負担を測り知れません。


単に「自制心の無い浦島」と言えないほど、切なすぎる背景でした。

浦島太郎のトゥルーエンド
acworksさん

 実は浦島太郎の原作と言われる『御伽草子』には続きが書いてあったのです。

…絶望した浦島太郎がかたみの筥を開けると、紫の雲が立ちのぼり、太郎は老人の姿になってしまいました。さらにその後は鶴となり、「蓬莱山」という仙人が住むといわれている理想郷へ飛び立ちます。

同じ頃、竜宮城の女性(乙姫)も亀へと姿を変え、蓬莱山へと向かうのでした。

参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%A6%E5%B3%B6%E5%A4%AA%E9%83%8E

一説によると、ここから鶴と亀は縁起物であるという風習の原点であり、他の書物にも書かれている「浦島子」では亀が女性に姿を変えて太郎と結婚するというストーリーは共通しています。


救いの手を差し伸べるかのように、浦島太郎のトゥルーエンドが存在していました。


この物語を子どもに読み聞かせるとき、”人を見て学ぶ教訓”にするか”太古のラブストーリー”するかはあなた次第です。

トゥルーエンドVer

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