人は常に損をすることを嫌います。
損をしたくないという理由には、人の心理が強く影響しているのです。
近年、行動経済学という分野が注目を浴びていますが、経済と心理には密接な関係性があります。
この心理を理解すると、消費や浪費の心理を理解でき、マネーリテラシーの向上やビジネスとしても有用な心理学です。
投資はギャンブル?「損」が嫌いな人間の心理
精神医学者のクロニンジャーは、人間の基本的な気質のひとつに「損失回避」を挙げています。
「損失回避」とは、用心深く、リスクを嫌う性質を言います。
「人は損を嫌い、利益に貪欲」ですが、特に日本人は几帳面で完璧志向な傾向を持つため、この心理が強く出ます。
例に挙げるとすれば、”お金の投資”は損失回避が強く働くひとつです。
金融庁が案内していて、税金優遇される「個人型確定拠出年金(iDeCo(イデコ))」「NISA(少額投資非課税制度)」や「積み立てNISA」があります。
しかし、日本では資産運用を行う人は多くありません。
多くの人が「気になりつつも、期待した効果が無かったら困る」と思っています。
まさに、「損を嫌う心理」が強く働いているのが分かります。
普段の買い物も「なるべく損が無いように」と考えがちです。
しかし、本当の価値や必要性を考える事は生活を豊かにするために必要になります。
物事を客観的に見るだけでなく、自分の考えも第3者目線で考えられると、冷静に判断できます。
主観が優先される「プロスペクト理論」
プロスペクト理論とは、あいまいな状況下で物事を決める際に、事実と異なる偏った認が作用するという意思決定の理論です。
これは、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のカーネマンとヴェルスキーが提唱しました。
この理論では、人は「利益を大きくすること」よりも「損失を小さくすること」に強くこだわります。
客観的な事実よりも、主観的な感覚が優先されてしまう心理なのです。
有名な実験に以下のものがあります。
これは実際の調査で使用した内容で、金額は現在価値に換算してます。
多くの人の結果では次のようになりました。
- 問1は、多くの人が「必ず10万円をもえらえる」方を選びます。
- 問2は、損失を回避できる10%にかけて、「90%の確率で11万円失う」方を選びます。
- 問3は、確率は五分五分で払うよりも利益を得る可能性があるのに「魅力を感じず、やらない」を選びます。
カーネマンはこのことから「損失は利益よりも大きく感じられる」と結論付けました。
損をしないための「投資の心理学」と「行動経済学」
「マイルール」を決めておく
ブレないルールがあれば、悩まずに済みます。
これが、この記事の中で一番大事なポイントです。
わかってるつもりでも、自分に甘くなってしまう日もあります。
ただ、投資や経済においてそれは失敗の原因になります。
一喜一憂したり、優柔不断な判断が損失を招くのです。
株価の損切など、時には苦渋の決断もありますが、合理的で正しい芯のあるルールは投資で成功につながります。
株価が上がる日がある?
心理学では、株価は晴れた日に上がります。
理由は単純で、晴れの日には気分が浮かれるからです。
この気分の変化は、多くの国や人々にとって共通しているものになります。
実際に、次のような研究結果があります。
米国のデビッド・ハーシュレイファーは、1982年~1997年の15年間で26か国のお天気データとそれぞれの株価を調べました。
すると、どの国でも天気がいい日には、その日の終わりの株価が上がっていたのです。
しかも、雨や雪などの天気には株価の相関は見られませんでした。
結果、晴れた日のみで株価が上昇していたのです。
自分だけは大丈夫の心理
日々、事故や事件のニュースを見ているけれど、私たちはどこかで「自分は大丈夫」、そんな風に思っています。
実際に次のような調査があります。
米国ニュージャージー州のラトガース大学のネイル・ウェインステイン、258名の大学生に「将来、自分もしくは他人がいくつかの問題を抱える可能性はどれくらいあるか」を尋ねました。
結果は次のようになりました。
- 飲酒に関する問題:「自分に起こる可能性」ー「他人に起こる可能性」=-58.3%
- 自殺に関する問題:「自分に起こる可能性」ー「他人に起こる可能性」=-55.9%
- 離婚に関する問題:「自分に起こる可能性」ー「他人に起こる可能性」=-48.7%
- 病気に関する問題:「自分に起こる可能性」ー「他人に起こる可能性」=-38.4%
多くの人が「自分は平気だけど他人は平気じゃない」そんなふうに思っていたのです。
この調査の対象は海外の大学生であり、環境や理解等の影響もありそうですが、本能で楽観的に考えてしまう部分があるのかもしれません。
日本人はより神経質な傾向にあるともいわれるので、低くはなりそうです。
しかし、私は先日火事の現場に遭遇しましたが、周辺住民は驚く程に楽観的でした。
火事の家の隣人すら慌てる様子もなく「大丈夫でしょう」と話していました。
不安というストレスへの防衛機制なのかもしれません。
この事実、過度に楽観的や悲観的でいる必要はありませんが、頭の片隅に入れておきたいですね。
会社の不祥事が相次いで起こる理由
ニュースを見るたびに「〇〇会社の不正が発覚しました。」などと報道されています。
業績が良く、堅調な動きをしていた株価も、不祥事ひとつによって暴落することがあります。
なぜ、大きな問題に上がるまで気づけなかったのか。
それには、組織心理が大きく関わっています。
周囲から突起したことが出来ない同調圧力や内部の現状維持バイアス、保身などいろいろな要因があります。
結局、「不正に薄々気づいても、不正をやめさせる行動をとらない」ということです。
組織には「出る杭は打たれる」という言葉があるように、従順じゃないルールに背く人間は目を付けられます。
会社には2種類の顧客があります。
「一般消費者などの外部顧客」と「社員や提携従業員などの内部顧客」です。
表向きの印象だけでなく、実際に関わっている人の満足度や意見も重要と言えます。
衝動買いする香りがある
良い香りなど嗅覚の刺激によって人の心は変化することがわかっています。
なかでも、衝動買いしてしまうという香りがあり、それが「ラベンダーや柑橘系の香り」になります。
どちらも人の心を穏やかでポジティブにしてくれます。
その変化が購買意欲に関わっていたのです。
ちなみに、カナダで行われたこの実験では、混んでいる店では柑橘系は逆効果で、ラベンダーは状況に問わず効果があったとしています。
柑橘系は、興奮作用もあるので、混んでいるとイライラにつながってしまうと考えられています。
これらの香りは、芳香剤でも使われているので、気分で判断しないよう注意したいですね。
買い物かごを持つとたくさん買ってしまう
買い物かごを持つ動作に意味があります。
私たちが「両手を胸元に引き寄せるような動作は、受容や好意に繋がりやすく、両手を前に伸ばして突き出すような動作は拒否に繋がりやすい。」と言われています。
ということは、買い物かごを持っている方がたくさん買ってしまう可能性があると言えます。
オランダのエラスムス大学経営大学院のブラム・ファン・デン・ベルフは、136名の買い物客へ「カゴを持っている人」と「カートを押している人」に商品を見せました。
すると、買い物かごを持っている人の方がチョコレートなどの幸福感に繋がる商品を買っていったのです。
体感的にも買い物かごに入れた商品とカートに入れた商品では、カートの方が品を戻すときの抵抗感が薄いのは私だけでしょうか?
どちらにせよ、それで経済が回っているのであれば良い事でしょう。
しかし、消費者としては商品の無駄買いには気を付けたいところです。
あらかじめ買うものは決めておいた方が良いでしょう。
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