長期休暇は短い休みよりもリラックスできるのか?
ドイツにあるコンスタンツ大学のヤーナ・クーネルはイースターと聖霊降臨祭の休暇でリラックス効果があったかを調査しました。
調査は休暇2週間前と休暇1週間後、2週間後、1か月後に行われました。
結果、リラックス効果を実感したという回答があり、長期休暇後には意欲的になる事が分かりました。
しかし、調査を続けると1か月も効力は継続しなかったのです。
さらに、効果の持続は仕事の忙しさに影響され、多忙ではすぐに消えてしまい、長期休暇後に定期的に休みを入れると効果が持続することも分かっています。
- イースターとはキリスト復活を祝うイベント(クリスマスみたいなもの)。
聖霊降臨祭とはキリストの聖霊の派遣(降臨)に対する儀。
長期休暇のメリット
以上の研究から長期休暇のリラックス効果はあったものの、その後の過ごし方で効果が持続するかは左右されることが分かりました。
それはそのはずですね。
生きていればストレスや疲労は蓄積するので休みの効果は薄れていくものです。
ただ、せっかく長い休みを取ったなら普段の休みよりリラックス効果を得たいと思うでしょう。
では、長期休暇は他にどんなメリットがあるのでしょうか。以下のものが考えられます。
- 自由な時間がとれて好きな事が出来る。
- 仕事を交代制で行え、不正防止に繋がる
- スキルアップができ、感性を育てる。
- 介護休暇等の離職を防げる。
- 家庭の時間が持てる
- ストレス解消、気分転換
長期休暇で「仕事に行きたくなくなる」3つの心理
予期不安
予期不安は業務と人間関係に生じることが考えられます。
予期不安とは頭の中に想像で不安な考えが生まるものです。
この場合の不安な考えとは、長期休暇により職場の環境が知らないうちに変化する、休んでいる間に仕事が溜まる、長期休暇による周囲の評価を恐れるなどがあると思います。
医療や福祉の現場では患者様や利用者様が入れ替わるので日々変化が生まれます。
さらに、連絡事項や仕事が溜まり、休んでいると周囲と関わりが減り、「のんきに休んで…」と思われるのではないかと考えてしまうのですね。
連休後の溜まった仕事量は確かに負担です。
内容を確認してスケジューリング、養った栄気で仕事を一気に消化していく。
それは考えただけで嫌になるのもわかります。
周囲との関係性では、存在を忘れられるのに抵抗を感じてしまいます。
自分がいなくても回っている会社や長期休暇で役割を失い、孤立感を感じることもあります。
これにはマズローの欲求階説の集団に属する「所属と愛の欲求」、認められたい「承認欲求」が関わっているのではないでしょうか。
次の記事では承認欲求について書いています。
罪悪感
繊細な人や責任感がある人は休む事で「仕事で役に立てていない」などと罪悪感を感じます。
また、役割や責任が伴ってくると「こんな時に居ないなんて」とか「忙しいのに」、「こっちは休めないのに」と思われることにも罪悪感を感じてしまいます。
休んでいるのに罪悪感を感じ、気持ちがすっきりしないなんてことも長期休暇を嫌がる原因になります。不安は罪悪感を助長し、罪悪感は不安を生む「負の連鎖」に陥りやすいです。
このような感情になるのはある程度致し方ない部分もあります。
それを軽減するためには本人と周囲の理解を合わせて行くことが大事です。
職場の理解が伴わないと人間関係で不利益を被る可能性もあります。
まずは、理解の統一のため働き方改革について話し合いをするといいでしょう。
休日に休む事は労働者の権利なのですから。
生活リズムの変調
普通の会社員であれば仕事を含め、ある程度一定の生活リズムを維持して過ごしています。
パートやシフト勤務であったとしても決められた枠組みの中で生活しています。
このリズムや枠組みがあるからこそ仕事にメリハリが付きます。
体温が一定のように、人は変動が少ないほうが、心の安定を保てます。
長期休暇は良くも悪くもこのリズムを崩すことになります。
変化に強い人は柔軟に働くことができますが、人によっては逆にストレスになってしまうのです。
生活リズムが激動で常に忙しい人は燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)になってしまいます。
サービス業や医療・福祉、教師などの仕事は感情労働で特に陥りやすい状態なので気を付けましょう。
また、働いている人は曜日によってトラブルを起こしやすい曜日というのもあります。
一定のリズムにも気分の波があることを覚えておきましょう。
諸外国との違い
日本人は外国のビジネスパーソンから見て「真面目」「働きすぎ」などと言われています。
その理由は、休暇への意識と労働時間の長さです。
日本人は残業時間の多さや多忙による睡眠不足・病気・自殺などが問題視され、働き方改革が推進されていますが他国と比べると遅れをとっているのも事実です。
実際、欧米諸国では以下の休暇制度があります。
●「フランスでは年間5週間の有休取得を義務づける」
休暇先進国といわれるフランスでは、既に1930年代に全ての労働者が毎年連続2週間の有給休暇を付与される、通称「バカンス法(正式名称:マティニョン法)」と呼ばれる法律が定められていました(※1)。 それ以後、有給休暇の付与日数は時代を追うごとに増え、1982年に現在の水準である年5週間の有給休暇が付与されるよう定められました。
5月1日から10月31日の間を有給休暇の法定取得期間と定め、労働者はこの期間内に4週間、残りの半年の期間に1週間の有給休暇を消化しなければなりません。また、法定取得期間に取得する4週間の有給休暇のうち、2週間は連続した休暇である必要があります。もしも使用者が、法定取得期間内に従業員に4週間の休暇を取得させることができなければ、法定取得期間外に取得した休暇の日数に応じて、追加の有給休暇を与えることになっています。
●ドイツには「労働時間貯蓄制度」がある
ドイツには「労働時間貯蓄制度」というユニークな制度があり、労働時間をあたかも銀行預金のように口座に積み立て、労働者は後日休暇等のためにこれを利用できる仕組みです。積み立てた労働時間は1日や2日といった短期間の休暇のために使われることもありますが、労働時間口座のある企業の63%で長期的な休暇に使われています(※2)。また、貯蓄した労働時間を使って早期引退を可能にする制度を設けている企業もあります。企業にとっては残業や残業手当の発生を回避し、従業員にとってはワーク・ライフ・バランスを実現しやすく、労使双方にメリットの制度として定着しています。
テンプ ナレッジマガジン:https://www.tempstaff.co.jp/magazine/manage/vol31.html
素晴らしいですね。
日本の大手企業はリフッレッシュ休暇にも積極的ですが、なかなか難しいのが現状です。
今でこそ、年5回以上の有休休暇と言われていますが、祝日以外で3日以上休む事なんて稀なのではないでしょうか。
以下のは日本の令和2年厚生労働省による企業の有給取得率と特別休暇制度の導入状況です。
休暇種別 | 「ある」との回答をした企業の割合 | 1回あたりの最高付与数 | 賃金の支給状況 |
---|---|---|---|
リフレッシュ休暇 | 11.1% | 6.2日数 | 全額(83.6%) 一部(2.6%) 無給(13.7%) |
有給取得率が上がり、特別休暇1割弱がリフレッシュに充てられています。
ただ、リフレッシュ休暇は依然と比べてもあまり増えていませんね。
日本の企業はまだまだこれからです。
日本人に合った働き方があるのかもしれませんが、個人に応じて柔軟な働き方ができると良いですね。
働き方に加え、休み方というのが良いものになる事を願っています。
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