いい香りは人に多くのプラス効果をもたらします。
例えば、次のようなシーンを想像してください。
良いにおいのお部屋にいる時
苦手なにおいのお部屋にいる時
感情の変化が想像だけでわかると思います。
においは人の気持ちをリラックスさせたり、元気にさせたり、時に人を惹きつけるなど人の感情や記憶に強く影響します。
香りやにおいは科学的にも心理学としても効果が認められています。
今回はそんな良い効果をもたらすにおい・香りの心理学についてお話します。
いい香りで人は親切になる!?
私たちは、いい香りのするところでは気持ちが良くなり、人に親切になりやすいという事が分かっています。
例えば、芳ばしい香りのコーヒー店や綺麗な花が並ぶお花屋さんなどでは気持ちがリラックスして、穏やかになっているでしょう。
しかし、本当にそうなのか?
次の研究ではそれを調べられています。
米国の連スラー・ポリテクニック研究所のロバート・バロンは、二つの場所で紙幣の両替をお願いしました。
「クッキーやコーヒーのいい香りがするお店の前」と「無臭の洋品店」です。
同性の歩行者に対して「すみません、お金の両替をしてもらえませんか?」と尋ねたのです。
結果は次のようになりました。
男女ともに、良い香りがする場所では親切な行為をしてくれることが明らかになりました。
さらに、男性よりも女性の方が良い香りのお店の前では親切になっています。
これには、女性の方が男性よりも嗅覚が鋭いことが影響してそうです。
2014年11月の米オンライン科学誌「プロスワン」で掲載された合同研究に、「女性の嗅覚細胞は男性の1.5倍」と報告がされています。
加齢臭や枕の臭いなど、男性が委縮するような話を聞きますが、これには嗅覚の違いによる影響もあると考えられます。
これらの結果から、人と関わる場所では良い匂いの芳香剤などを使用するといいでしょう。
部屋のにおいが臭いと性格が悪くなる!?
イギリスにあるブリマス大学のサイモン・シュネルは市販の「おならスプレー」を使って、匂いによってどれだけ他人に厳しくなるのかを調べました。
次の3つの部屋を設定します。
①とても不快なにおいのする部屋(おならスプレーを6フィート離れたゴミ箱に8回散布)
②ほどほどに不快なにおいがする部屋(おならスプレーを6フィート離れたゴミ箱に4回散布)
③無臭の部屋(おならスプレー無し)
このそれぞれの部屋の中で参加者に「従兄弟とのセックスは道徳的にどれくらい許しがたいですか?」など4つの道徳的質問をしました。
結果、不快なにおいにいる人は「許しがたい」と判断し、無臭では「問題ではない」という答えが多かったそうです。
- 6フィートは約1m83㎝
- なんと「オーガニック素材」のおならスプレー、レビューは大興奮。
ユーモアが効いた実験ですね。
手に付いたら取れないくらいキツイ臭いならそれは性格が厳しくもなります。
においのきつい部屋では不快感が強くなり、ストレスで怒りっぽくなってしまうのもうなずけます。
職場や自分自身の匂いはどうでしょう?
人間の嗅覚は感情と結びつきが強いので、「不快なにおい=嫌いな人」と錯覚されかねません。
嗅覚の差
これはイギリスでの実験でしたが、嗅覚の過敏さに国別の差はあるのでしょうか。
調べてみると、遺伝や育ちなど環境的な要因も大きいものの、「国別の明確な差は結論付けられなかった」という論文がありました。
結果、おならスプレーは全人種に共通して臭いという事が分かりました。
ちなみに、イギリス人は次のような性格だそうです。
- 礼儀正しく、敬語を使う
- 断り方は遠回し
- 謙遜する
- 男女ともに紳士的
- プライドが高い
日本人と似ているところもあり、親近感湧きますね。
嗅覚の程度
かつてより”他の動物より人間は嗅覚に劣る”と言われてきましたが、「実は人間はネズミや犬と同等の嗅覚を持っている。」という内容を見つけました。
これは科学誌「サイエンス誌(電子版)」で発表された、米ラトガース大学の神経科学者ジョン・マクガン氏の論文がもととなっています。
これによると、ヒトは1兆種類ものにおいをかぎ分ける力を持ち、ネズミや犬と同等に嗅覚が優れているという。
人間の脳内を占める嗅球(脳にある嗅覚情報を処理する場所)の割合はネズミで2%、ヒトで0.01%と小さいですが、嗅球は発達することから機能的な差は少ないとしました。
では、なぜ警察犬や麻薬探知犬などニオイのエキスパートが存在するかというと、匂いを嗅ぎ分けるのにも得意・不得意があるからとされています。
例えば、尿などの動物的なニオイは犬の方が優れていますが、ワインや日本酒などは人間の方が嗅ぎ分けられるそうです。
「遺伝や育ちなど環境的な要因も大きい」と述べましたが、人種で嫌いな臭いが違うように、もしかしたら人間の嗅覚の差は好き・嫌いで分かれるのかもしれませんね。
買い物をしたくなる香りがある!?
デザインがおしゃれで機能的な商品はとても買いたくなりますよね。
でも、ふらっと見てただけなのについ気持ちが上がって買ってしまった商品などの心あたりはないでしょうか?
実は、人をポジティブにする香りがあり、実際にあらゆるお店で香りの心理効果を巧みに使って商売をしています。
この心理効果を調べたのが以下の研究になります。
カナダのライアソン大学のリチャード・ミッションは、ショッピングモールで香料を使い、「良い香りをさせた日」と「無臭の日」を設定しました。
香りはラベンダーとシトラスの2種類。
香りのある日は、10個の噴霧器で6分おきに3秒間噴射しました。
結果、いい香りがする日は「お客さんからのお店の評判や商品の評価が高まる」ということが分かりました。
さらに、この実験ではお店が混んできた時にシトラスの匂いは逆効果になる事が分かりました。
しかし、ラベンダーはそれに関係なくポジティブな作用があったそうです。
これには、次のような香りの効果が影響しているのではないかと考えられます。
シトラス系は集中力や記憶力を高め、気分を向上させる作用があります。
ラベンダーは、フローラルな花の香りと柔らかな印象でリラックス効果を与えます。
このように、あまり意識しないにおいにはこれらの心理効果がありました。
他にも、リラックス効果を高めて心身の健康に関わったり、運動や勉強の効果を高めたりなど、香りは多くの効果を秘めています。
いい香りが人間関係も良好にしますし、プレゼントにも喜ばれるでしょう。
香りと魅力度の実験
ノースイースタン大学のウェン・リーは、レモンと汗臭の2種類を用いて、25段階で香りの強さを変え、80人に嗅がせ、人の写真の魅力度を測定しました。
レモンの香りでは、高い魅力度を付けましたが、汗臭では誰に対しても悪い評価を付けました。
この研究では魅力度について評価していますが、魅力度とは単に愛欲だけではありません。
心理学では、相手に良い面を感じると、評価も付随することが分かっています。
「良い香り→清潔感がある→評価が上がる」というようになるのです。
「サブリミナル・スメル」
このような微かな香りで相手の印象を操作する事をウェン・リーは「サブリミナル・スメル」と呼んでいます。
心理学では、認識できないほどごく短い時間の刺激を呈示することで、潜在意識に影響を与える効果を「サブリミナル効果」と言います。
この暗示とも言える「サブリミナル効果」は科学的に立証はされていません。
しかし、テレビの放送ではサブリミナル効果を使用することを禁じています。
何かしら影響があるのだと考えられていますが、嗅覚に関しても同じことが言えます。
香りのサブリミナルは禁止されているわけでは無いので、積極的に使っていきたいところです。
実際、経営の神様と称される松下幸之助は、会食では必ず先に着き、部屋の臭いを念入りに確認していたと言います。
部屋の臭いで自分の印象が悪くなると考えていたからでしょう。
相手が女性の場合は、男性よりも嗅覚が鋭いと言われているので、より意識しておく必要があります。
しかし、香りは好き嫌いが分かれるものなので、次の記事を参考にすると良いでしょう。
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