投資と心理は強く影響し合っています。
前回、投資について記事を書きました。
近年、投資をする方が増えています。
決めたルールでコツコツと安全に投資できていれば問題ありませんが、実際に投資をしているとゴミ商品の勧誘や保有している株の時価総額チャートが上下したり、商品銘柄売買のタイミングを見極めたりで精神力を求められます。
そんな時、心理学を知っていると今の状態を客観視できるので、焦って間違った行動をすることを予防することができます。
なので、この記事では皆様の健全な投資を応援するために、投資に関係する心理学について解説いたします。
お金持ちはポジティブな発言が多い
お金持ちは発言がポジティブであることが多いようです。それには以下のような分析があります。
カナダにあるケープ・ブレトン大学のスチュワート・マッカンは「Twitterを使ってお金持ちはどんなつぶやきをしているか」を調べました。
14万人以上のつぶやきを分析し、ポジティブ発言とネガティブ発言に分類していきました。そして、その人の社会的・経済的地位を調査しました。
結果、社会的・経済的な地位が高い人は、つぶやきの内容がポジティブなことが分かりました。
このことから、Twitterで判ったお金持ちは次のような言葉を使う人です。
- 「今日はとても素晴らしい一日だ!」
- 「私は、なんて幸せ者なんだろう。」
- 「世界がバラ色に見える!」
このような文章を使っている人には近寄り難さを感じるかもしれませんが、お金持ちというのは「言葉と思考が普通とは違う」という事です。
これとは対照に、愚痴や文句、不満などのネガティブ発言をしている人は地位・経済的に満足がいっていないのでしょう。
心理学では、「気分一致効果」というのがあります。
「不機嫌でいると悪いところしか見えず、上機嫌でいると良いところばかりが見える」というような心理作用を言います。
どちらがお金持ちかは分かりますね。当然、良いところを見る上機嫌な人です。
物事のポジティブな側面を見つけ、楽しんだり、喜ぶような思考プロセスを取っている人はお金持ちになるでしょう。
精神的な余裕は感情に影響し、言葉や思考は環境に影響を受けます。
お金持ちになっている人は、見た目からは想像つかない人も多いです。
無駄遣いせず倹約して、コツコツと投資に回しているのも金銭的余裕のある人の特徴です。
そのような点では、達観している人も多いのでしょう。
株価は天気に左右される?
天気は人の気分を左右させます。
晴れた日はすがすがしく気分も高まりますが、雨の日はどんより落ち込みます。
米国オハイオ州立大学のデビッド・ハーシュレイファーは「晴れの日に気分が浮かれて株が買われるのではないか?」と考え、1982年~1997年の15年間のデータを調べました。
すると、仮説通りどの国でも天気がいい日はその日の株価の終値が上がっていたのです。
株価が上がるという事は買いたい人が売りたい人より多い時を指します。
多くの人が晴れの日に浮かれ、株を買っていたのです。
逆に雨や雪の日はマイナスには落ち込まず、横ばいだったそうです。
という事は、「株を売るなら晴れの日がいい!」とも言えますね。
自分の行動を決める基準
私たちは自分で物事を選択し、一貫して芯が通った行動を起こせているのでしょうか?
個別株などの投資をするときは、自分で調べて出資先に期待と信用を預ける必要があります。
その行動に芯が無いとすぐに狼狽売りしてしまい、時に大損します。
しかし、心理学的に行動は自分がやりたいかという基準で、全て決められていないことがあるといいます。
オックスフォード大学のフィリップ・ラシュトンはサクラの見知らぬ女性と10分間話をさせた後、献血の声掛けに女性が応じたらもう一人はどうするかという実験を行いました。
結果、献血を直接お願いするよりも女性が受けた場合の方が応じる人も多かったのです。
このように、人は「周りの人たちがやっているから自分もやらなきゃ」と思うように周囲の影響を強く受けます。
さらに、調べている段階で確証バイアスが働き、同じような意見など自分にとって都合のいい情報を無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視したり集めようとしなかったりすることがあります。
他人の意見に影響されることを自覚していないと誤った判断をしてしまいます。
その意見も含めて自分の行動が持てるように考えましょう。
囚人のジレンマ
有名な話に以下のようなものがあります。
窃盗事件を犯して捕まった二人の男が居ます。
この男達には重大事件の余罪があります。
窃盗だけなら2年の懲役、重大事件が分かれば15年の懲役になります。
しかし、決定的な証拠がなく重大事件を起訴するためには自白がカギとなります。
そのため、検察は条件を付けました。
「おい!窃盗だけの罪なら2年だけどな」
「相手が不利なように自白すれば1年で出してやる。」
「もしも、先に相手が自白すればお前は15年の懲役だからな。」
「ただ、二人とも自白するなら10年だからな」
自白しようかなぁ。でも、相手にも裏切られたらどうしよう。
この場合、一番懲役期間が短いのは片方の自白ですが、両方が合理的に考えたらお互いに沈黙した場合が”合計で4年”ともっとも短くなります。
このような二者の利害関係をめぐる意思決定のジレンマを「囚人のジレンマ」と言います。
このようなジレンマは社会でも起きています。
例えば、スマホプランの価格競争がいい例です。
互いに結託すれば価格を据え置きできますが、どこかが値下げしたことで「値引き合戦」が始まります。結果、商品の単価が落ちてしまいます。
これは、証券会社や投資信託などの手数料でも見られるものだと思います。
もしも、どこかがグッと値下げした場合、他もそれに追随する可能性があると言えるでしょう。
いろいろな心理効果
ここからは投資にも影響する日頃から生じる心理的効果について解説していきます。
バーナム効果
バーナム効果とはどんな人にも当てはまるような内容でも、言われると信じてしまうような心理的効果のことを言います。血液型占いもこの効果が影響しています。
よく広告では「こんな方におススメです!」という売り文句がいたるところで使われています。
こういった文句で実際に投資の商品を勧めてくる人は少なくありません。
「ラクに稼ぎたいっすよね。」
「投資の管理が面倒な人にはプロが代わりにやってくれる方法があるんすよ。」
「家を出たあとに鍵をかけたり、火を消したか心配ではありませんか?そんなあなたにピッタリな元本が保証されたこちらの商品がありますよ。」
このように、言葉巧みに近寄ってくる人の中には詐欺師や高額の手数料が目的な場合があります。
これを聞いて「誰にでも当てはまるヤツや!」と思う事が出来ると不安を極度に煽られずに済みます。
なので、覚えておいて損はありません。
※ポンジスキーム
代表的な投資詐欺に「ポンジスキーム」というものがあります。
投資家に「高い配当金出せるよ」などと言って資金を集め、実際は運用せず新しい出資者からの出資金を配当金にあてて信用させた後、破綻を言い訳にお金を騙し取る手法です。
「認知的不協和」「一貫性の原理」
行動や考えの矛盾によって生じる不快感が生じることを認知的不協和と言います。
たとえば、明日は仕事が早いのに夜更かししている時、
「俺っち寝ないほうが調子いいんだよねー。」
などと自分にとって都合のいい考えで矛盾が解消しようとします。
このような「認知的不協和の解消」による行動の正当化を私たちは日常的に行なっています。
少し割高に感じる時の株に対して「あれは良いものじゃない」と考えたり、保有している明らかに見込みのない株を損切りできず「自分以外も持って人いるし」と安心感を得ようとします。
また、自らの行動や発言、信念などに対して一貫したものとしたいという「一貫性の原理」も働きます。
自分が公言していたり、悩んで購入した株に対して情が移ってしまい手放すことをやめます。
これらは自分が保有している株を損切りするときに影響します。
この見極めは難しいですが盲信的になってしまうのは危険です。
ハロー効果(後光効果)
人や物事に対して良い印象を感じると、悪い面を感じなくなる心理現象を指します。
後光というように一つの要素が光って周りを見えにくくしてしまうのです。
これは購買行動にも強く影響しています。
例えば、「大好きな有名人が支持してるならいい商品に決まっている。」などと思ってしまう事です。
さらに、口コミを見て「みんなが高評価してるから」と思うこともこの効果と言えます。
いろいろな広告に有名人を起用されていますが、商品を保証するものではありません。
最近では投資家Youtuberも多いので流されないように自分の考えと照らして考えなくてはいけません。
多くの人に支持されているというのは一つの信頼要素なだけです。
ヒューリスティックス
私たちは意思決定の際に「ヒューリスティックス(発見的手法)」という思考法を使っています。
簡単に言うと、経験則や先入観などからそのものの意味を見出すことです。
例えば、街中で外国人の方を見かけた際に「英語を話せるんだろうな~。」と考えます。
しかし、実際は育ちが日本で英語は全く話せないかもしれません。
私たちは物事を簡便にかつ瞬時に判断するためにヒューリスティックスという思考法を使用しています。
ですが、この思考法はハジマリが間違っていたらその後の思考も間違ってしまう可能性が高いです。
統計学ではこのことを「第1種の過誤(タイプ1エラー)」と呼びます。
さらに、ヒューリスティックスは4つの分類に分かれています。
代表性ヒューリスティック
これは、ステレオタイプ(代表的な思い込み)との比較で判断する思考法です。
冒頭の外国人という見た目から判断したのはこの例と言えます。
人の見た目や印象でその人の性格を考えたりなど日ごろから使っています。
有名な例に以下のものがあります。
リンダは31歳、独身で、積極的に発言する非常に聡明な人です。
大学では哲学を専攻し、学生時代には差別や社会正義の問題に関心を持っていました。
また、反核デモに参加していました。
現在のリンダについて推測する場合、1と2のどちらの可能性が高いと思いますか?
- リンダは銀行員である。
- リンダは銀行員で、反核運動もしている。
上記の問いは、現在のリンダは何をしているかを求めるものですが、確率的に共通している「1.リンダは銀行員である」だけの方が可能性としては高いです。
しかし、この例題は実験でも出されたのですが90%の人が”2”を選んだと言います。
ここには、反核運動をしていたという言葉から人物像をイメージしてしまい、その印象が答えに影響していると考えられます。
利用可能性ヒューリスティック
これは、思い出しやすいまたは知っていることなど利用しやすい情報をもとに判断する思考法です。
早く答えを導き出すために経験則や興味関心から判断しています。
投資で言えばチャートの分析をする人はそれだけで判断してしまう場合が当てはまります。
チャートが上下する理由をわざわざ経済ニュースなど見て調べずに、自分の知っていることを使って売買の判断をしてしまうのです。
この思考法だけに頼ってしまうと、重大な欠陥が後から発覚することも考えられます。
係留と調整ヒューリスティック
これは、最初に与えられた情報を手がかりに、最終的な判断を推測する思考法です。
例えば、ショートケーキについて「この食べ物は辛い?辛くない?」と言われたときに、「辛くない」と判断するような場合を言います。
この時、「甘い」と言わず、辛さを求める2択という最初の情報に答えは左右されています。
シミュレーション・ヒューリスティック
これは、経験や先入観などから物事を推定する思考法です。
この思考法は将来の予想、因果推論、反実仮想などに使われるとされています。
- 将来の予想:「暴落を乗り越えたこの株は次に株価が暴落しても一時的なものだ」と経験から未来を予想する。
- 因果推論:「この株価の暴落はデモによる治安の悪化が原因だろう」と原因と結果の関係を推論する。
- 反実仮想:「あの時に仮想通貨を買っていれば今頃大金を手にしていたのに」と事実と異なる想定をする。
実際にこれらの推論は仮定でしかありません。実際の関連性などは不明だからです。
以上が投資にも関連する日常でも見られる心理学です。
投資をしている方もそうでない方も知っていて損する知識ではないでしょう。
ぜひ、これらを知り、冷静で客観的に物事を判断していきましょう。
コメント